文系への転身!?「高専だからこそ得られるもの」—環境省 総合環境政策局 熊谷克宏さん—Vol.16

今回のインタビューゲストは高専から経済学部、MBAへ、そして参議院事務局へ入局された熊谷さんです。
高専で得たもの、大学編入から将来の事まで、様々なお話を伺いました。

プロフィール
2003年3月 茨城工業高等専門学校 電子制御工学科 卒業
2005年3月 信州大学 経済学部経済学科 卒業
2007年3月 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 経営政策科学専攻 修了(MBA)
2007年4月 参議院事務局 入局
現在、環境省に出向し、総合環境政策局 環境計画課 計画調整係長

高専に入ったきっかけは何だったのですか。
中3の夏まで高専という存在は知りませんでした。大学に楽をして行きたいという発想があって(笑)。当時、両親と進路の話をしていた際に、高専からは大学に編入学ができ、センター試験等を受験するよりも楽な形式で大学進学ができるのではないかという事になりました。当時は、必ずしも理系に進みたいと思っていた訳ではなく、高専の説明会で文系の大学にも編入学できるということを聞いたので、理系と文系どちらにも行けるのなら、「じゃあやってみるか」と。将来は、政治や行政に関わる職場で働きたいと漠然と思っていたので、そうした職場では珍しいであろう、理系ルートから入るのもおもしろいかなと思っていました。「人と違う」ということは強みになるのでは、とポジティブに考えていましたね。

高専時代、印象に残っている事はありますか。
やっぱり一番は寮生活ですね。同じ寮で毎日、同級生・先輩・後輩と過ごした日々は思い出深く、今すぐにでも戻りたいですよ。最大4歳差の先輩と後輩が何人もいる環境で毎日を共に過ごすのは良い経験でした。5年生の先輩なんて自分が入学した時にはおっさんですよ(笑)。そんな年上の人たちと色んな話をしたり、遊んだりするのはおもしろかったですし、逆に自分が5年生(20歳)の時に中学校卒業したての後輩と遊ぶっていうのもおもしろかったです。世代・考え方の違う多くの人と接することで、自分の視野が広がりました。社会人になると、人とのコミュニケーションが非常に大事です。人付き合いや人当たりの良さは、勉強以外に重要な要素なんですけど、一朝一夕に学べることではない。そういう意味で、寮生活は良い経験をさせてもらったなと思います。

逆に、高専時代に何かやっておけばよかったなと思う事はありますか。
それは勉強です。あまり大っぴらには言えませんが、寮では遊ぶ事が楽しすぎて、次の日の授業に影響することも多々あり、勉強を疎かにしちゃいました。高専で学ぶ内容は、大学や大学院はもちろん、社会に出てからも結構使えるんですよ。同僚やお客さんと仕事の話や雑談をしている際に、何かの流れでロボットやら機械やら理系の話になった時に、「名前は聞いた事あるけど思い出せない」ということが多々あるんです。「しまった、ちゃんと勉強しとけばよかった」と後悔しています。高専の勉強は社会に出てからも意外に役立つので、「遊びながらでいいのでしっかりとやった方がいいよ」という事は、後輩たちに伝えたいですね。

大学、大学院はどうでしたか。
好きだった数学をいかせると思い、経済学部に3年次編入学をしました。高専時に大して勉強していなかったくせにと言われるかもしれませんが、これまでに学んだことがない経済学という分野を学ぶのは非常に刺激的で、講義にも真面目に出席しました。大学院ではMBAコースを専攻したのですが、これまた刺激的で、工学部や外国語大学出身等の様々な分野からの入学者、社会人経験者や現役の官公庁・地方公共団体の方、さらには、中国の留学生や中東の行政府の方など、色々な人がいたので、先生からだけでなく、クラスメートから今まで見たことも聞いたこともないことを多く学べました。これは自信をもって言えるんですけど、「みんなに遅れないように、追いつくように」と思い、本当に勉強をがんばりました。

お仕事はどのような事をされているんですか。
参議院事務局に入局して一番初めは、議員課という部署で、国会議員の方々の身分等に関する仕事をしました。次に、財政金融委員会調査室という部署で、国会議員の方々からの調査依頼等に応えるシンクタンクのような仕事をしました。その次に、議案課という部署で、法律案等の受理・審査先の整理等を担当しました。私たち国会職員は、裏方として黒子に徹しているのですが、自分が担当していたものが国会議員の方々を通して表に出る時もあり、そのような時は非常にやりがいを感じます。そして、現在は環境省に出向しており、環境計画課という部署で、審議会の運営や、「グッドライフアワード」という平成25年度創設の賞の運営を担当しています。環境省は、他省庁、地方公共団体、民間企業など、色々な職場からの出向者が多いので、高専の寮を思い出す感じです。仕事の後や休日には、同僚と一緒にお酒を飲んだり、アウトドア活動を楽しんだりしています。

お仕事をする中で、どのような動きをされていたのですか?
国会職員としては、情報収集を多くやりました。電話だったり直接歩いたりして、リアルタイムの情報を収集していました。といっても、自分自身で新たな情報を取るというより、2次情報をいただくという形が多かったので、信頼関係が大事でした。信頼を損ねたら、誰も情報くれませんよね。高専の寮生活で得た色々な人との付き合いという経験が生きていると思っています。

夢や目標など教えてください。
分野に関係なく、日本のためになる仕事を支えていきたいっていう考えを持っています。これまでの社会人経験の中では、どの部署に配属されても配属先の担当事項に心を奪われて、その仕事が楽しくなるくらいハマっていきました。抽象的な回答で申し訳ないですが、これからも、その時々の関心事項の中から、「日本のために良いこと」を探していきたいと思います。100点満点のクオリティは難しいですが、やろうと思えば何でもできるはずです。

後輩への一言をお願いします。
自分が寮生活で学んだことですが、高専には幅広い年代の人がいるので、同学年の人だけでなく、色々な人とたくさん話をして、いっぱい遊んでください。ただし、高専の勉強はやっておくと将来的に損はないことを実体験したので、遊びつつも勉強をしていただきたい。また、私自身に対してですが、高専生は専門分野をいかして進学・就職する人もいれば、私のように違う分野に進む人もいるので、様々な将来を見据える高専生のために役立つ何かをやってみたいと思います。このインタビューがその一つかと思いますので、何か知りたいこと等ありましたら、ぜひ、高専ベンチャー経由で何なりとお問い合わせください。

(インタビュー:河内あゆ)