今回のインタビューゲストは島田一雄さん(都立航空高専元校長、高専ベンチャーアドバイザー、HNK顧問、高専カンファレンス顧問)

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プロフィール
都立大付工高(都立工業高専前身校)電気科卒・電通大卒。上智大助手、東大宇宙航空研究所助手・工学部講師を経て、88年航空高専電子工学科教授、02年同校校長。05年(財)日本無線協会参与、11年同専務理事、12年(公財)日本無線協会専務理事、14同特別参与。08~09芝浦工大非常勤講師、衛星設計コンテスト実行委員、JAXAH2Aロケット第1回相乗り小型衛星選定委員、高専ベンチャーアドバイザー、HNK顧問、高専カンファレンス顧問、航空高専名誉教授、工博(東大)。永年、高専衛星作りを推進、09年航空高専・産業技術高専衛星「KKS-1」打上げ成功を見る。

頭より手足の方が先に動く高専生は強い!
強い高専人が繋がれば、鬼に金棒!!

―今日は、島田先生にお会い出来て良かったです。是非とも高専に関するお話を聞かせてください!早速ですが、高専に対して感じていることを率直にお聞かせ下さい!

高専って本当は凄く大きな可能性を秘めているんだよ。

―と言いますと??

「高専OBよ、繋がれ!」と言いたい。OBネットワークがしっかり構築できれば、いろんな可能性が広がるってことだ。高専は50年以上も前から時代を先取りした高大一貫の早期技術者教育、「鉄は熱いうちに打て」教育を施して来た文部科学省ご自慢の教育システムで、世界的にもユニークな高等技術教育機関として高い評価を得ているんだよ。そこで鍛えられた有能なOBが縁の下の力持ちとしてこの国を支えてきてくれているんだよ、間違いなく。すでにリタイアしている60歳代の大先輩から未だ卒業したての若いOBまで40万高専人が手を携え、力を合わせて、高専の発展のために、後輩高専生のために、日本のために、高専魂を発揮して活躍して行って欲しいと願っているんだ。
同様に、各高専の“モノづくり”等での地域との繋がりを、全国規模まで広げてもらいたいね。いま、私が関係している事例を紹介するよ。

―どんなお話しですか?

一つは10年前に私がキックオフした高い波でも使える水上飛行機づくりだ。2人乗りの初号機を沖縄に2年前に納入したのを見て、沖縄で開発・運用をやりたいと手を挙げた人が出てきたんだよ、モノづくりは大学よりも高専と嬉しい話になり、6月頃から水上飛行機につけるフロート用のFRP材料製造法を開発した八戸高専にも参画願い、製造は沖縄高専にお願いする計画が進んでいるんだよ。水上飛行機づくりをトリガーにして、沖縄を航空機づくりならびに航空技術者養成のメッカにしようとの計画も進行中で、それを担う若い技術者の育成は高専のミッションとの熱い要望が私に寄せられているんだよ。一方、戦後初の国産機YS-11の製造中止以来40年以上途絶えていた国産航空機製造が再開と期待されていた小型ジェット機MRJのロールアウト(完成披露)が10月に華々しく行われたね。来年5月頃の試験飛行を経て、2017年に1号機がANAに納入される予定だそうで、科学技術立国日本にとってその技術力を世界にアピールすることになり、とても嬉しいね。日本の航空産業の担い手は“モノづくり”を看板にしている高専から輩出しなければと強く思っているこの頃だよ。

―水上飛行機おもしろそうですね。まだ他にもありますか?

二つ目は、未だほやほやのホットニュースだよ。私が22年間携わっている「衛星設計コンテスト」絡みの人工衛星づくりだ。航空高専では私が15年も旗を振り続けて、やっと5年前に3kg の小さな衛星をJAXAの第1回H2Aロケット相乗りで打ち上げてもらっているんだけど知っているかな?
衛星設計コンテストには毎年、どこかの高専が最終審査会に出場しているんだけど、丁度1年前に、出場の高知高専の先生から「‘高専スペース連携’という、宇宙に関心を持っている高専の先生方でMLを創るので、顧問として入って」と言われ、入れてもらったんだよ。あいさつを頼まれたので、「皆さんの協力で国立高専衛星を打ち上げるべし!」とエールを送っといたんだ。そしたら、神は見ているね!今年の10月に文科省が「宇宙航空科学技術推進委託費」の公募をやったんだよ。“国立高専超小型衛星実現に向けての全国高専連携宇宙人材育成事業“というテーマで、8高専の先生方が短期間に連携プレイで説得力のある書類を作成して応募したんだ。11月末に書類審査をクリア、文科省からヒアリングの呼び出しが来て、私も応援に馳せ参じたんだよ。1週間後に結果発表と聞いていたのに翌日には3年間3,000万円の予算の内示があり、先生方も大喜びで、いま予算書作成におおわらわなんだ。計画が進展して、宇宙を指向する多くの高専の学生や若い先生が育ち、国立高専衛星が宇宙を舞う日がとても楽しみだね。
いま話したのは、私が関係している通信分野のほんの一例だけど、高専には多くの教育研究分野があるんだから、パワフルな高専人の皆さんが協力、連携すれば、いろんなことが展開できると思うよ。

―でも、そんな可能性を秘めているのに、高専の人のネットワークが広がっていかない。

そう、そういうこと。私が応援している“HNK”は20年の長い歴史を持つ全国高専OBの会でこれまで日本各地で年一回の総会を毎年開催したり、東京では月例会を開いたりしているんだけど、なかなか会員が増えないんだよね。今年の9月末には産業技術高専荒川キャンパスで、現役学生や若いOB諸君に運営委員に入ってもらい、多彩な分野で活躍中の20名を超す有名なOBを登壇者に迎えて、拡大高専OB大会(第17回総会)を開催したんだ。高専ベンチャー代表の弦本さんにもパネラーをお願いしたんだけど知っている?高専機構の高月理事も最初から最後までお付き合い下さり、高専ネットワーク拡張をとのエールをいただくなど、かなり盛り上がったので、しめた、これで行けるぞと意気込んだ私、会員増を期待したんだけど、いまのところ増えてないんで、どうしたものか悩んでいるところなの(苦笑)。いいアイデアないですか?
一方、6年前のロボコン全国大会の時に、全国の高専同窓会の役員の方々が集まり、同窓会連合会をつくるための準備会がスタートしたので期待したんだけど、これまた、毎年開かれているけど、なかなかことは進まず、今年の集まりでも連合会結成に至らなかったとのことで、がっかりしているところ。
最近「高専を考える議員連盟」というものが設立されたとの情報もあり、高専がクローズアップされつつあるのだから、当事者のOBも各校同窓会の繋がり、いわば縦糸に対して、それら結ぶ横糸の役割をする同窓会連合会を一日も早く創り、議連に働きかけをするぐらいやりなさいよと強く思っているだけどねー。
その点、高専生の力を社会にアピールしてくれている“高専ベンチャー”や数年前から活動している高専生・若手OBの勉強会“高専カンファレンス”の諸君のアクティビティは頼もしいね!大先輩OBが中心の同窓会やHNKは見習って、早急に広範、かつ強固な高専ネットワークを構築し、OBの連携を深め、高専ならびに高専生を支援するとともに、高専の良さを社会にアピールして欲しいね。

―次に、高専はどんなところが強みだとお考えですか?

三つ上げるとすれば、‘寮生活’、‘実践的’、‘学習環境’かな。

まずは、‘寮生活’について。
多くの高専生が寮生活なんだよね。都立高専には寮がないし、寮生活を私は経験してないんだけど、人格形成上とてもいいと言われているよね。5年間あるいは専攻科を入れると7年間も寮で共同生活を経験することは、他の学校では経験できず、意義深いことだと思うよ。出身高専は違っても高専OBは寮生活をしてきた仲間として何か相通ずるものがあり、初めて会っても非常に親近感があるとよく聞くよ。この点は、高専ヒューマンネットワークを拡げるには好都合なんだけどね。

二つ目の‘実践的’というのは、高専は最初に”モノありき”だっていうこと。
例えば、大学教育は理論から入る、対して、高専はモノに触れる実践から入る。大学生は理論を主に学んで、モノにはほとんど触れないが、高専生は手を動かしモノに触れる教育を先に受け、後から理論を学ぶカリキュラムになっているんだ。ある研究所のトップの方から「新しいシステムを設計開発試作することになった時に、大学出は、何社からもカタログを取り寄せパラパラとめくっているが、高専卒は、則、秋葉原に部品を買いに走り、モノづくりを始める。高専の教育は実践的で素晴らしい、いろいろな方が同様なことを言っていますよ」という高専の良さを端的に表す嬉しい話を聞いたことがあるよ。

三つ目は一番大事な‘学習環境’についてだね。
高専は、感性豊かな若い時に専門の道に入り、基礎から応用まで、じっくり学ぶことができる環境が整っているよ。受験勉強に毒され、中断されることのない5年間、あるいは7年間の連続した青春を、勉強や部活に専念できることは素晴らしいことだよ!
最近は大学編入の実績を売りにする高専もあるようだし、大学に入り易いからと高専に入学してくる中学生もいるようだけど、高専教育の本質から外れていると思うよ。高専では“虚”の紙の上での受験勉強から解放されて、“実”のモノを扱う専門の勉強に打ち込めることが最大のメリットなんだから、常に頭に大学合格がちらついていては、“実”の勉強がおろそかになり、あぶはち取らずになってしまうよ。高専では“専門に打ち込む”ことを大事にして欲しいね。大学側で高専での学習成果の評価にウエイトをかけた、過度な受験勉強不要の選抜をしてくれる限りにおいては、大学あるいは大学院でさらなる研鑽を積むことを否定する積りは全くなく、むしろ理想的なキャリアパスの1つだと思いますよ。

―高専の”強み”って重要ですよね。では、最後に現役の高専生へ向けて一言お願いします!!

世界に冠たるユニークな教育システム「高専」で学んでいることに誇りと自信を持ち、5年間、あるいは7年間の連続した青春を浪費しないで、グローバルに活躍できるエンジニアを目指して、歯を食いしばって日々研鑽、実践力を磨き上げるとともに、人格も磨いて欲しいね。